不動産仲介の仕組みと査定の注意点
本日は不動産の仲介について、お話させていただきます。
【2つの査定方法】
まず不動産売却の流れから説明しましょう。
不動産を売りたいと思っている人が、不動産屋さんを訪ねます。
売るにしてもまず「どれくらいで売れるか」を知りたい売主さんは、不動産屋さんにいくらくらいで売れるか「査定」を依頼します。
査定にも2種類の方法があります。
(こちらでも説明文は掲載していますが、もう少し割り砕いて書いています)
・机上査定
「机上査定」とは、読んで字のごとく机の上で土地や建物の面積、駅までの距離や近隣周辺の環境など、見に行かなくてもおおよそ見当がつく材料を用いて、「これくらいなら売れるんじゃないかな?」という金額を電卓をはじいて出すといった感じです。
・現地査定
「現地査定」は上記の方法より知り得た情報に加え、現地でしかわからないような状況把握や建物の間取りや、築年数そして傷み具合、近隣との取り決め事項など細部にまで調査を行い、販売期間3ヶ月以内で成約に至るであろう金額を提示します。
【査定という概念】
先ほどから幾度か出ている「査定」という言葉。
例えば、車屋さんをイメージして下さい。
あなたは「車」を買い替えたいと思っています。今乗っている車を売却しようと中古屋さん「A」に査定を依頼しました。
業者Aは「50万円でいかがでしょう?」と提示してきました。
次に「家」を売る場合をイメージしてください。
あなたは「家」を買い替えたいと思っています。今住んでいる家を売却しようと不動産屋さん「B」に査定を依頼しました。
「B」さんは「2000万円だったら売れると思いますよ。」
決定的な違いがあります。
それはいったいどこでしょう?
車・・・査定=買取
中古屋さん「A」がお金を出して車を買い取る。
家・・・査定≠買取
=売却依頼先の選定
不動産屋さん「B」は「これくらいだったら売れるんじゃないですか?」といった自身の経験と勘で金額を提示しているケースが多いです。。
もちろん売主さんに金額を提示するときは「なぜその金額なのか?」ということを根拠立てて説明する義務があります。
【売却依頼の仕組みについて】
次に不動産仲介の仕組みについてご説明します。
上記の図式をご覧ください。
これは「専属専任媒介契約(専任媒介契約)」という売主さんと不動産会社が結ぶ「販売」の契約方式になります。
ようは売却するにあたっての取り決め事項といったものですね。
流れとしては
1.売りたいと思っている人が不動産会社「A」を訪ねます。
2.「A」は売出する金額を決めるために「査定」を行います。
3.査定結果を報告し、売却を「A」に頼む際に「専属専任媒介契約」を締結。
「A」はさまざまな広告活動を行い、買主さんを探します。
※ここで「A」が買主さんを見つけてきて、売買が成立したら売主さんと買主さんから仲介手数料をいただけます。このように両方から手数料をいただくことを略して「両手」といいます。
4.「A」は販売努力するものの、なかなか買主が見つからない場合、ある一定の期間が経過すると「不動産流通機構」という不動産会社が閲覧できるデータサーバに「A」さんの不動産情報を登録します。(義務行為)
5.そのデータサーバを閲覧した各不動産会社さんが物件情報を基に買主さんを見つけてくれます。
※よく「この物件、他でも見たことがあるな」と思われるのは、不動産会社はお互いの物件情報を共有しているからなんです。
「B」社さんが買主さんを見つけてきてくれた場合、業者「A」と「B」との共同仲介ということになります。
この際の手数料はお互いのお客さん、「A」は売主さん、「B」は買主さんから手数料をいただきます。片方から手数料をいただくことを業界用語で「片手」といいます。
結局何が言いたいかというと、売主さんから販売依頼をいただければ、不動産が売れた時点で確実に「片手」の手数料は確保できるということです。
うまくいけば「両手」でもらえるチャンスも秘めています。
【高値を言うのが仕事ではない】
仕組みを知っていただいたところで、「査定」のお話に戻りましょう。
先ほど、家の査定方法について書きました。
査定金額はおおよそ3ヶ月以内(専属契約の最長期限)に成約できるであろう金額を、事例や不動産の状況を考慮して算出しています。
不動産会社によっては算出方法は違うかと思いますが、大きな差が出ることはありません。
しかし、売主さんから売却の依頼を受けるというのは確実に手数料がいただけることを確約しています(専属・専任契約の場合のみ)。
だから不動産会社さんは是が非でも売主さんから販売依頼を獲得しようと躍起になっていきます。
売主さんの売却依頼の大半は「あの会社が一番高く査定してくれたから」という理由で販売元の不動産会社を決めておられます。
その結果、売れもしない金額を提示して、売却依頼を獲得しようという業者さんが後を堪えません。これが俗にいう「高額査定」という行為です。
【大手企業が言う「販売力」とは?】
みなさんが良く耳にする「某大手不動産会社」さんがよく使われる魔法の言葉。
「販売力に自身あり」
謳い文句のように、よく広告などに書かれていますが、先ほども不動産仲介の仕組みでもご説明したとおり、全国には123,416もの不動産業者(平成28年度)があります。
確かに広告宣伝費用などは中小や個人事業主に比べれば、圧倒的と言えるでしょう。
しかし図式のように、お互いが物件情報や購入希望者を紹介しあえるため、大手と中小に関係なく「営業力」や「販売力」に差は出ることはありません。
じゃあ何を持って、売却を依頼する不動産会社を決めればいいか。
私は「営業マンの誠意と売主さんとの相性」だと思います。
なので、査定の金額ももちろん大事ですが、売主さんのことを思って活動するからこそ、言いにくいことでもしっかり伝えてくれることが重要だと私は考えています。
【査定依頼をお受けした時の体験談】
先日このようなご売却の査定依頼をお受けしました。
「たくさんの不動産屋に家の査定をお願いしたが、どれも金額が自分が思う金額からかけ離れている。まだどこの業者に頼むかまだ決めてへん。あんたのところやったらどうや?」
実際拝見するに、室内は相当に改装が必要で、法令制限や近隣の販売事例から考えても、500万円以上は高いご要望だと思いました。
「依頼しようとお考えの不動産会社さんはいくらくらいの査定を提示されていますか?」と伺ったら「とりあえず希望値で出してみましょうと提案された。」というお話でした。
それってもう査定じゃないですよね。
「後出しじゃんけんの言ったもん勝ち」という状態です。
先ほどの車の査定と違って、いくら高い値段を提示しても自身でお金を出す必要がありませんから、売れなければ「いや、相場より高いから売れないんですよ。」なんていとも簡単に言われてしまうのが関の山です。
売出金額は査定金額をひとつの指標としながらも、売主さんの希望値を伺って、販売価格を決定するんですが、これだと不動産会社として、そもそもの根拠を示していません。
私はおべっか無しに不動産のプロとして意見を述べました。
「弊社の査定金額は売主さんの希望値よりもはるかに低い金額です。理由は〇〇だからです。それをご理解いただいたうえで、まずはご希望の金額でご売却に出すことは可能です。」と思ったことをそのままお話しました。
・・・結果的にご売却の依頼はいただけませんでした。
【買主さんは調べています】
不動産のプロとして、きちんとした情報を売主さんに伝えることはとても大きいことだと私は思います。しかし実情はそうではありません。
いいことばかり言って、結果的に高額な査定金額を提示すれば、売主さんも高く評価してくれたと嬉しくなるのは当然です。
間違ってはいけないのは、その金額を判断するのは消費者である「買主さん」です。
売主さんは高く売りたい、買主さんは安く買いたい。そのせめぎ合いです。
インターネットが爆発的に普及した今、スマホ片手にいつでも必要な時に調べられる時代です。相場を無視した金額ではどれだけ需要があっても売れません。人生を大きく左右する家だからこそ、買主さんはとても慎重で、色々調べ尽くしています。
あなたが買主さんの立場だったら、同じ行動されませんか?
【不動産のプロとしてあるべき姿とは】
私としては不動産のプロとして、根拠を示した金額をお伝えしたうえで、売主さんのご意向をお聞きするようにしています。
※ローンが残っているからご希望値でしか売却出来ないなど。
売れなければ、やはり高かったんだということをご理解いただけるひとつの指標にもなります。もちろんその地域で買いたいと思っている方がいらっしゃれば、ご希望されていた金額で売れることも可能性は0ではありません。
まずは「やってみないとわからない」ということは一理あります。
「隣の家は借金しても買え」という言葉があるように、ひょっとするとお隣さんが高値で購入してくれるなんてことも考えられます。
しかし不動産会社の務めは「高く査定して喜んでいただくこと」ではなく「相場の範疇でより高く、より早期に売却すること」です。
ご売却をご依頼される際は金額だけで判断するのではなく、ご自身と営業マンの相性もよくみて依頼してみてはいかがでしょうか?